映画、本、ゲーム、ドラマなどの感想。Blueskyからサルベージできた分をメモ。文章になってないというか、つぶやきまんまです。
感想書いてないのもある。
というか、zineあたりで少しずつ読んでるやつとかの細かい感想は拾いきれてなくて、もう少しやり方考えないとだなあと思っています。
それと、いつもながら拍手ありがとうございます。ついでみたいになっちゃってすみません。
でも本当にうれしいです。
▼映画
『フュリオサ』
非常に良かった。たぶん私は前作より好き。フューリーロードでは前面に出て主張するほどではなかったビザールな気配がさらに濃厚に、支配的になる画面作りがまず最高。クリヘムも素晴らしく、現代の我々の卑小さの気分を残して映画と現実をつなぐ橋渡し役になるなんて想像してなかった。観てるあいだ、なぜかずっとアレクセイ・ゲルマンを思い出したりしていて、やっぱりこの人の余裕こき方すげえなとおもうなど
手練れが練りに練った構成は誰が観たって観ればわかるレベルですごいのでくどくど言ってもなって感じではあるんだが、愛玩と逃亡防止のための鈴の音が鎖の音に呼応するのは笑っちゃうくらい美しかったです
観客が涎垂らして待ち望んでるであろうアクションやカタルシスは与えず、べつのとんでもない美しい様々を繰り出しながら最後まで走り抜けてしまうあの手腕、ほんとうに痛快だった 老獪…
クリヘムが本当に良かった。彼のやることはどこか間抜けで言葉はペラペラで軽く、ある程度は(またはその時は)本気だったりするあたりがさらに軽薄で、下手したら紳士的とすら映るときさえある。どことなく憎めない。が、その憎めなさこそが彼の邪さであり、それは現代が陥った地獄の似姿でもあるように私には見えた
じつはわりとご近所物語だったっていうのもめちゃくちゃ良かった 神話が、叙事詩が生まれていく過程 だから書記がいて語り部がいる クリヘムの最期が本当にそうだったのかは問題ではなく、「そう記録された」ことが大事。
で、けど、じゃあ彼の苦悩も軽いのかといえばむしろイモータン・ジョーより深く、重く、寒々しい。狂いきれないまま(まあ狂ってはいるんだが)絶望に埋没して身動きが取れなくなり、ただ自分の心身がだめになっていく様を目をかっ開いて見つめ続けているという、自責と諦めの最悪のスパイラルに囚われた正体が顕わになる終盤の変調は、クリス・ヘムズワースでなければできなかった仕事だろう。
フュリオサの不満点、強いて言うならファンサ的に登場するマックスのカットかもしれん 要らん
そういや上映前のCMでエルデンリングのDLC流れたのさすがにびっくりしたな そんな感じの規模になってるのかよ すげーー
2024年6月4日
『イベント・ホライゾン』
めっちゃ久しぶりに観た(@U-NEXT)んだけど、こんなに面白かったっけ?!ってびっくりするほどタイトで気の利いた佳品だった。いや、すごく好きなんだけど、でもこんなにちゃんとしてたか…って感心してしまった……。しかも見終わったあとにオススメで『パンドラム』出してくれて、もう百点です。ありがとうユーネク。
2024年6月7日
『NOCEBO/ノセボ』
社会派ってことになってるらしいけど、こういう力をマジで使えるフィリピン人がするっと出てくるあたりでなんだかね…となってしまってあまり乗れず。そもそも厭さがそこまででもないし、恨みの対象が狭すぎて、ううん……私だったらブランドの出す服そのものに悪さして買う人たちまで呪うけどなあ…
なんかこう、「差別ホラーかとおもったらむしろ批判をしていた!深い!」的な短絡さだけで出来てるとこがあって、それは乗ったらダメだとおもうんだよね…ダニがギャグみたいになるとことか、そんな小ネタ的なゾンビへの目配せ要るか?とか、この監督はどうも浅い……
もう少し「信じさせる」「罪悪感」というキーワードと、彼女のもつ「力」の接近させ方みたいなのを考えるべきだったとおもうんだよね…あのままだと超凄パワを持つじゅじゅつしが東南アジアからやって来てさくしゅするせいようじんをのろう!!!みたいな話に見えてしまう。
2024年6月8日
『回路』
YouTubeで無料配信中ということで流しっぱにしてたのだが、流し見ですらやっぱりとんでもないことをやってるなと改めて引く。私にとって「映画館を出たら世界が違って見えていた」体験を初めて味わった作品だということをさっぴいても、映画の放つ重苦しさに圧倒される。
この歳になってから見ると、救いのなさ(希望はあるが)が尋常じゃない。「終わり!!!!」と絶叫してるような映画。怖すぎてこの作品のソフトをしばらく買わなかった。手元に置いとくのイヤで……
2024年6月13日
『蛇の道』(2024)
軽やかに優雅に情熱的に撮られているなというのもとても良かった。柴咲コウは言わずもがなに素晴らしかったし、青木崇高も素晴らしく良かった
黒沢清、女性という存在に対する(扱い方含めた)戸惑いやためらいをガンガン克服していってるように見える すげーな
黒沢清の映画は映画であることへの渇望から始まり、映画そのものに近づいていくのだな、とおもった。仰々しい禍々しさ(それ自体はとても良いものだが)を脱ぎ捨て、役者も変わり、国も変わり、物語というものの捉え方すら変わり、それでもなおひとつの作品の光の当て方でこうも同じでこうも違うものができるのか、作品のもつ貌を、奥行きを、ひとりでこうも捉え直せるものかと、感動しました。黒沢清の映画が観られる歓び。同時代のよろこび。
ごめんなさいなにをいうとるかわからんわ
なんかね、「映画はこれでいい」というのを、“言われてるから言ってる”のでも“言ってるだけ”でもなく、“こうだからこう”の確信でやっているなと感じられて圧倒というか感動したんだよ……(「これでいい」っていうのは、“こういうのでいいんだよ”ではなくね)
7th Codeと比べて観たくなってきた
ビューティフル・ニューベイエリア・プロジェクトあたりってじつは地味に転換期なんじゃないか
ダミアン・ボナールがついに発砲してしまうシーンで一瞬カットが繋ぎ直されたような、映写機がガタッてなった?みたいな妙な画面のがたつきがあったとおもうんだけど、あったよね?たんにわたしの集中力が切れて視界が変だった?
西島秀俊の顔がなかなか映らない、からのようやく映る瞬間とか、とにかく高度なことをサラッとやっているので、なんかほんと怖くなったんだよね この人の撮る映画怖い……ってなった 本当になんか変な領域にいるなとおもって
ほぼ同じ脚本で、あの禍々しい暴力と狂気のVシネからあんな洗練されたフランスの犯罪映画になるの、どう考えても凄すぎるんよ 映画…映画とは………
2024年6月14日
『デビルズ・リジェクト』
U-NEXTだらだら徘徊してたらあるの見っけてわー!ある!えらい!って盛り上がってとりあえず流してるんだけど夫も私もたまに画面見ては「かっけー」しか言ってない 何故ならすべてがかっこいいので…
『悪魔のいけにえ』の殺人鬼成分やスプラッタ成分、田舎ホラー成分を引き継いだ映画はたくさん作られたけど、乾ききったクールな画面を高水準で受け継げたのはこの映画くらいな気がするんだよな
ロブ・ゾンビは『ロード・オブ・セイラム』がいちばん絆されたんだけど、かっこよさならやっぱデビルズ・リジェクトだね…
2024年6月15日
『パール』
タイ・ウエストの。X同様ミア・ゴス無双ではあるんだけど、X以上に一人舞台でシェイクスピアもかくやの長台詞あり。そのあいだカメラはミア・ゴスに固定。しかしパールの情緒のジェットコースターぶりを知っている観客はその長台詞に胸の痛みを覚えつついつ爆発するか若干気が気じゃないという厭なジリジリした時間を味わえる。最後の斧を携えてくるパールの「当たり前のように」来る感じが非常に恐ろしく、愉しく、わたしは前作よりも好感を持った。(母娘の軋轢のあたりは食傷ではあったが、まあ、ティピカルであることが美徳の形式でもあるので、まあまあまあ、ね、で流すことは可)
2024年6月16日
『サンクスギビング』
イーライ・ロスの。やっっっと観たーーー!たーーーのしかった。ケタケタ笑ってずっとニコニコしてられた。和むね。
グリーン・インフェルノあたりのロスはちょっと賢すぎて飛ばしきれない感があったんだけど、これはいい感じにのんびりしていて、スラッシャーというほどスラッシャーしてないけどしみじみたくさん人がしんでたのしい、みたいな絶妙のサイズ感でマジでよかった。ありがとう。癒された…
まあ、ただ、ベクトルの向き変わったけどやっぱ優等生であることには違いないので、ボダランどうなるかな…
2024年6月17日
『みなに幸あれ』
これ、ホラーの味付けではあるけれどストレンジフィクションとか奇妙な味とか、そのタイプのやつなんだね。ものすごくわかりやすい寓話。ランティモスのファンタジー“風”がホラー“風”になってる感じといえばわかりやすいかもしれない。ただ、寓話にしては生ぬるく、その先をどう描くかまでは到達していないのでちょっと物足りなかった。
すごくホラー演出なんだけど、たぶんこの監督がガチホラー撮ってもそんなに恐ろしくはならないんじゃないかという気がした。どっちかっていうと症状みたいなもんなんじゃないかな…手癖までは言わんけど。あんましホラーそのものには今のところ興味なさそう。
2024年7月13日
『ザ・ウォッチャーズ』
粗だらけだけどときどきおっとおもう画面もあるし、何よりそうか、この展開をやりたかったのか……ならまあ……とおもって観てたらクレジットで原作つきと判明してずっこけた。台詞でぜんぶ言っちゃだめじゃん……………何とは言わないけど発想すごく良いし美術もがんばってるんだから(アレのデザインは個人的には嫌いというかダメだとおもうけど)…………
ちなみに後半はわりとフロム・ソフトウェア感あった というかザキミヤにゲームにしてもらったほうがよほど原作活きたんじゃないかとちょっと思ってしまった。とにかくアレの造形があまりにも凡庸で哀れにもならなければ恐怖も感じないのがほんとよくない。特に音!!!あんな汎用的なコキコキ音出させたらすべてが台無しなんですよ!!!!!💢舞台にアレらが引き寄せられてくるシーンはけっこう良かっただけに、いかにもどこかでみたことあるクリーチャー然としたビジュを良しとしてしまったその雑さはマジ反省してくれ
と、まあだいぶズッコケではあったけどわりかし私は楽しかったです。6〜7割原作のおかげかなと思わんでもないが…
あとアイルランドの風景は(街角のシーン含めて)すごく良かった。全面協力してたみたいだけど、ほんのちょっと映るだけのストリートの景色がちゃんと匂いもさせてくれてた。(たぶんそこで絆された面もあった)
2024年7月13日
『ホールドオーバーズ』
よかった。なんでこの映像でやるのかなという理由(「本物は残る」)も納得した。しかしまさか異国とはいえ夏に上映されるとは作ったほうもおもってなかったんじゃなかろうかってくらいクリスマスムービーでしたね
わたしも車運転できたら腹に据えかねるやつ轢けるんだなーとおもった なるほどね
2024年7月14日
『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』
動機もトリックもへったくれもなく全員感情と気分だけで動く“嵐の山荘”モノ。すげーーーくだらなくてリラックスできた。癒し系だよ。すき。
2024年7月31日
『スクリーム』
かなり久しぶりに見返した。96年で既にこれをやっていたんだよなあという驚嘆。とっ散らからずに何重もの皮肉を込める手腕を堪能しつつ、スラッシャーから離れたかったのに結局メガホンを取るに至った心境についておもいを馳せる。あらためて頭を垂れる。偉大な監督です。
毎年、8月になると何だかんだで一作はウェス・クレイヴンの監督作を見てるなーと今さらながら思い当たってしんみりする(8/30が命日)
2024年8月7日
『首』
風雲たけし城じゃん!て言いあいながら相当笑って観てた。わたしこれめっちゃ好きだな。たけしのキャリアで見てきた風景がそのままモロに描かれてて、しかもこれまでだったら照れたり誤魔化したりしてきたことをめんどくせぇとばかりに執拗なまでにわかりやすく生々しく描いてて、ああ、たけしだ……という感慨としみじみしたかんじがすごく好ましかった。たけしのお笑い見て育ってきたわたしには、「おおお、じいちゃん元気?」みたいな気分にもなるし。ほんとかなり好き。
なんか、これたけしの走馬灯じゃん…てなったんだよね『首』。これまで築いてきた信用とかキャリアをフル活用してクソデカ予算勝ち取ってるのもほぼ詐欺じゃんて感じでほんとに最低で最高
「苦手な分野はぜんぶ捨てて得意な分野に全力投球するのがうまい」的な感想がそこそこバズってんのを見たんだけど、それちょっと違うとおもうんだよな。あれはたけしが自分のできないことを強調して自虐的に皮肉まじりのギャグにしてるのであって、それってできることに注力してるのとはむしろ正反対だとおもうんだよ
獅童につきまとう死の影の棒立ちシルエットは最初期の虚無の立ち姿とまったく同じで、あれだけなんの釈明もなくただぶっこまれてるのがすごく怖く、陶酔するでもなくただ虚ろであることを映すたけしの原点みたいなの、すごく良かったんだよな。ただそこをクローズアップしちゃうとそれはそれで違って、それもたくさんある要素のひとつに過ぎないのが凄味だなとおもう
2024年8月10日
▼本
小泉喜美子『血の季節』
「このホラ」で知ってどうしても読みたくなり古本で落手。エルデンリングをちょっと脇に置いといて読了してしまうくらい面白かった。ミステリということを知らないまま読んだので、さいごに「謎解き」パートがあったのには驚いたが、耽美!耽美!耽美!となりがちな吸血鬼モノにあって抑制のきいた緊張感は好ましく、その裏で蠢く闇の気配の不穏さは群を抜いている。たしかにこれは復刊希望されるよなあ、と思いつつ、またもや入手困難になりつつあるので、常に在庫を絶やさないでほしい…。坂本眞一『#DRCL』と併せて読みたい。
個人的に胸打たれたのは、戦争、こと東京大空襲における悲惨さと、明確に感じ取れるそれへの怒りだった。幻想にあそぶ物語においてあからさまな“メッセージ”が読み取れると鼻白んでしまうほうだが、本作は彼が何故そうなったかというフックに見事に絡んでおり、また描写はあくまで悪夢としての幻想を貫いているので酔える。耽美にもさまざまあれど、かなりクールな耽溺の仕方で非常に心地よかった。
2024年6月23日
牧野修『猟奇の贄』
エルデンリングいったん横に置いといて一昨日くらいに読了していて、しみじみ面白かった。昏くて熱い猟奇の華がパッと咲き誇るエンタメ、待ってました、イヨッ!と掛け声かけて膝を打ちたくなる軽快作。たのしいよ!!!!根底には怒りがあるのも良いし、クライマックスのブチギレ主人公めちゃめちゃかっこよかった。そして美警官。なんだよ美警官て。ドラマ化しましょうこれ。そんで「は?原作こんなんじゃねーし?」とかキレたりしたい。しましょう。させてくれ。
にしても、悪の組織の存在が「ありえね………や、あってもまあおかしくないか、こんな世の中だし」と思ってしまう底抜け具合だけはなんとかならんもんかね…(ちなみに底抜け具合、というのは、現実の底のことです。ねんのため)
2024年6月30日
マット・ラフ『魂に秩序を』
青春小説系がピンとこない自分の好みとジュリーのめんどくささのおかげで序盤はちょっとエンジンが掛からなかったのだけど、そのジュリーとのいざこざが爆発するある事件から一気に加速し、ロードノヴェルっぽくなるあたりから俄然面白くなり、ページを繰る手が止まらなくなった。個人的にいちばん好きなのは終結部。事件が一段落しても生活は終わらないことを、寂しさを湛えて淡々と描いていく筆致は指輪物語を思い出したりもした。ストーリーとしては文庫裏のあらすじ以上のものはない(あらすじに書かれた部分で文庫の7割くらい行ってる)のに、
迷宮のように複雑で、先を予想させない。外から見ると小さいのに、入ると異様に広い家みたいな小説。(ただ、宣伝はさすがにセンセーショナルに書きすぎな気は……)
2024年7月17日
大島清昭『最恐の幽霊屋敷』
小休憩的なつもりで今日の午後読み始めて読了してしまった。こ、こわ………こわいやんけ…………ヒエエ………舐めてた…………
あ、でも古今東西のホラー映画伝承小説へのオマージュもりだくさんなのはすごく愉しかった!愉しかったんだけどちゃんと作品内に独自の怪として鎮座ましましてたので……こわかったです………そしてその終わり方よ……
これだけならネタバレにならんとおもうから言うけど「黄色い壁紙」のオマージュあったのはほんとにうれしかった。あれはこわいはなしだ。
あと大島清昭はふいに通りすぎる魔の描き方がとても上手い。映像的でありながら文章として艶がある。好き。
映像作品のオマージュ、とくにホラーはその映像、その恐怖の芯を捕まえた文章を読むとうおおおおおと叫びたくなるくらい興奮する あの映像はこの文章でしかあり得ない、という文章が存在すんのよな それに気づいたのはCUREの小説版だったんだけど 黒沢清の文章は黒沢清の映画を端的に表現していて凄かった ああ、この人の映画はこうなんだな、というハマり具合が……
大島清昭と倉数茂はこれがものすごく巧い数少ない書き手だとおもっている
2024年8月3日
北沢陶『をんごく』
端正なつくりで、美しく、哀しく、このホラでもわたしの信用している読み手がこのタイトルを挙げることが多かったので気になったのだが、その理由もよくわかった。なによりも、土地に根ざしたことばと登場人物たちの生死が分かち難く溶けまじっているのが心地よかった。
エリマキがこれ以上キャラ立ちしたら嫌だな…のぎりぎりで踏みとどまっているさじ加減にエンタメとしての高度な巧さを見た。とにかく巧い。万人が認めるうまさ。
ただ、宮部みゆき的なうまさでもあり、土着といってもあまり臭いはない(いい匂いだけ) 暗い幻想のなかでもかなりあかるい部類だとおもった
2024年8月3日
井上荒野『錠剤F』
太っていて、よれよれで、鈍感そうな不細工な女が無表情で真っ白な空間にただ突っ立っている。なんだか臭い。たぶん女の体臭だろう。そして、その女はたぶん(まったく似ていないけれど確かに)私なのだ。
そういう、乾いているのにどこか脂ぎったような風景が思い浮かぶ。厭とも哀とも憎とも違う、乾いた怒りと諦念を行きつ戻りつしながら、それでも生きることを斜に構えて見ているわけでもない体温のなさが心地よいといえば心地よい。見たくないわれわれの普通を無感情に放り出されているような安堵感と懐かしさもある。疲れるが、嫌いではない、というか、かなり面白くて夢中になっている気がする。
2024年8月5日
星野智幸『呪文』
現代の正確な寓話であり、古くからあっちこっちでひとを発奮させてきた“力強い”言葉たち=呪文のサンプリング小説だとおもった。短いしすぐ読めるので読むのおすすめ。
2024年8月28日
▼ゲーム
『岩倉アリア』
たぶんトゥルー(というか、いちばん物語の完成形として意図された)エンド見たのでクリア。概ね素晴らしかった。「百合」という名前を冠すると、そこに押し込められ流されてしまいがちな諸々が苦手というか、なんかすごく蔑ろにされてる感があって複雑な気持ちになるので意図的に百合と名付けられたものは避けてきたんだけど、これはそこに真っ向から異を唱える志を持った作品で、そういう意味でとても良かった。まあセカイ系的な狭さというか、その重みを文章で(表現するのではなく)書いちゃうか〜みたいなアクは依然としてあるんだけど、でもこの作品が世に出たことの意義のほうが遥かに大きいとおもう。面白かった。
やっぱこれ系合わないなーとおもう部分は、とにかく色々と大袈裟というか、悲惨さを強調しすぎて(嗜好という部分もあるんだとおもうけど)もうちょいシャキッとせえやと言いたくなる小手先の悲劇感があるところ。とはいえ、これはネタバレじゃないから書いていいとおもうけど、生理が当たり前のように存在するし、歳を取るし、生理現象をなにかの比喩としてでなくそのまま生理現象として描くし、当然女性同士の恋愛も当たり前に存在する。そういう物語を見せるぞという確固たる意志がとにかく素晴らしかったし、どこかしら報われるような感覚があった。
2024年7月21日
▼ドラマ・ドキュメンタリーなど
『私のトナカイちゃん』
すごく良かった。人の傷との向き合い方、癒し方が複雑怪奇で混乱していることを嘘偽りなく描いている。実体験なのかな、とおもう箇所がたくさんあった。ドニー以外も、ご両親も、元カノのお母さんも、テリーも、マーサも、おそらくはあの脚本家ですら、曲がりくねったやり方でずっと自身の傷と戦い続けているのだろうとおもう。そこに良いも悪いもない。少なくとも、何も負う気がない者が判断していいような物事は何一つないのだ。
この種のテーマを扱ってる作品としては久しぶりに爽快だったな
2024年6月1日
『アシュレイ・マディソン: セックスと嘘とスキャンダル』(Netflix)
おれこの事件もサイトもしらなかった…有名なんだね… CEOに復讐したいなら公開するのはCEOの個人データだけにしときゃいいのに、犯人ひどいことするなーと途中からかなりしんどくなった クスクス笑いって怖い…
2024年6月1日
『エリック』(Netflix)
なんかぜんぶ中途半端だったな…。何より、あのトーンの語りをやってんのに捜査にめちゃくちゃ貢献したティナ(刑事のアシスタント)がエピローグでハブられてんのマジで解せん
犬もさぁ…誰か引き取ってやんなよ……
2024年6月13日
『クリッパーズ』(FXオリジナル)
毎週見てるんだけど(日本だと鼠+で配信中)最新エピソードすごくよかった…。クリッパーズっていうバスケのチームに起きた事件の、実話ベースの内容なんだけど、オーナーがクソみたいな野郎でひどい人種差別発言がリークされて翻弄される周囲が本当にしんどくて泣きながら笑うしかできない…みたいなエピソードが延々と続く。でもすべての物事にすこしだけ距離を置いて描いていて、断罪するような雰囲気じゃなくて、観終わったあといつも「ひ、ひえ〜〜〜〜〜」って叫んでるような身を切られるような感覚がすしみじみ良い。夫が見たいって言わなければ知らなかったドラマなので感謝…。
特に最新エピソードは、Xがイヤになっちゃったポイントの出来事出来事をわーっと思い出すようななんとも言えない良いシーンの連続で、色々かんがえてくうちに、たぶん私は「良い人」たちの無意識な英雄願望みたいなのにうんざりしてたんだな…ということに気づいたりした。自分がそうなりたいだけなら害もないけど、善意と熱意で他人にも期待する身勝手さと鈍感さがほとほとイヤになっちゃったんだな…
2024年6月28日
『クリッパーズ』、怒りを見せるか鎮めるかという正解のないジレンマを丁寧に見せていてとても良かったな
2024年7月10日
「テイク100」(フェイクドキュメンタリーQ、YouTube)
結局そういうやつにならざるを得ないというか、そういうのがやりたいんだろうな… 仕込みをしないと現世になにかが立ち現れる実感を得がたくなってきたのか、たんに現代がそういう気分というトレンドなだけなのかわからんが、やっぱり映像の質感がどうも(気づかせるきっかけだとしても)雑だよなあということのほうが気になってしまう あと顔(頭部)が歪む、黒い影、呪いの伝播とやってることはまあまあクラシックの域を出てないのもなあ
残穢とかもそうなんだけど、あの手の仕掛けはある程度この世が安心なものでふしぎなこわいものはそのへんにはそういないという実感がないと怖くならないという問題があると前からおもってて、わたしはわりとそのへん冷めてしまう
2024年6月30日
『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』
すげーーー面白かった。ちょい説教くさい所があるのはちょっとなーとか、そのオチはさすがに落ち込む…みたいエピソードもあるんだけど、それにもすべて理由があった…。ラストは激アツすぎて思わず叫んだ。ジョコ・アンワル、あんたすげーーーよ。
ホラーというよりは世にも奇妙系のオムニバスなんだけど、ホラーとしても非常に正統派なことをやってたり、インドネシアの風俗をちょいちょい挟んできて世界へのアピールも欠かさず、まあ全方位抜かりない。これは届くべき人たちに届いてほしい。できれば短期間に見てしまうのおすすめ。7話しかないので。
2024年7月3日
『ザ・ボーイズ』S4
観終わりました た た たいへんだあーーーーーー!!!!8月後半くらいに最終シーズン放送してくれ………
2024年7月19日
『ジェントルメン』(Netflixドラマ版)
ぜんぜんいい話じゃなくてかなり面白かった。貴族こわいねえ
2024年7月28日
『アンブレラ・アカデミー』最終シーズン
見終わった。とりあえず、この風呂敷どうやって畳むの?畳めなくない??ってハラハラしてたから、綺麗にとは言わないまでもいちおうオチがついたことにまず拍手。
ただ、その結論で本当にいいのか………?というのはかなりある。しかも今回あんまりビシッとくるダンスシーンもなかったりして、いろいろ決め損ねた消化不良感がすごい。まあ、なんかもうよくわかんないしいっか…?みたいな。BABY SHARKの重ね方とかめっちゃ好きだっただけに、整合性無視していいからもっとバンバンキメ作ってほしかったなーという気持ちもある。謎の中途半端な日本推しも最後まで謎のままだったな……。まあ、あの家族たちは本当に好きなまま終われたのは良かった。最後までみんなだいすき。
これまでのよしみと愛嬌だけで乗り切ったとも言えるので、わかりやすい“テーマ”に走りがちないまの潮流ではだいぶ脳天気を維持できててすごいんじゃないかな そういう意味でもぜんぜん嫌いになれないというか うん
さすがにだめでは?と思いつつ(勝手に作り出された人たちなのにその結論不憫すぎる)、なんだかんだで悪いきもちにならないし嫌いじゃないし、最後までなんか微妙でかわいいドラマだったなーみたいな気持ちでいるのは、イデオロギーにシナリオ着せたみたいな作品が求められかつ評価されがちな今に疲れてるからかもなあ、とおもっている
2024年8月10日
UNTOLDシリーズ(Netflix)
ずっと見てるんだけどめちゃくちゃ面白い スポーツの知識がないから興味もなかったけど問題なく面白い
"昨日見てマンタイ・テオ選手のやつはかなり重かったんだけど、その中で「各種メディアが報道している“亡くなった恋人”というのは存在しない」ことをすっぱ抜いたゴシップメディアの記者たちが「自分たちが伝えたかったのは、“有名メディアがこぞって裏とりもしないまま、ただ盛り上がるからってだけで伝聞エピソードを垂れ流している”という部分だった。まさかあんなふうに世間が選手たちのプライベートに興味をスライドさせていくとは思ってなかった」と肩を落とす様子を見て、2024年いま現在だと「いやそこはプロなら分かれよ」と思ってしまったのだが、たぶん10年くらい前はまだそこまでではなかったんだよなと思い直した。私たちの社会はとんでもないスピードで遠いところまで来てしまっているんだな…と改めて怖くなる。
2024年8月27日
『バッド・ヴィーガン』(Netflix)
タイトルがひどい(感じ悪い)のと、有名な事件っぽい扱いだったのでずっと気になってたやつ。騙されるというか、コントロールされる側の心の動きがわたしはなんとなく理解できるんだけど、そこのひとつの障壁に「説明できない、説明してもどうせ理解されないからどんどん孤独になって相手しかいなくなる」というのがあってそんじゃどうすりゃよかったのよという気分に。Tinder詐欺とちょっと手口が似てるとこも暗澹とした。
サルマに罪がないわけじゃなく、彼女自身に問題も当然あるんだけど、人間なんだからまあそりゃねくらいの過ちでもあり、本当に怖い。
そして本筋には出てこないが、この番組でいちばん邪悪なのは「ヴィーガンとかいう意識高いセレブどもがやらかした!www」という嘲笑の色で報道を加熱させた(らしい)メディアなんじゃないかとも。
サルマのお友だちがそれなりに彼女のことをちゃんと心配してるのと、彼女の飼ってるわんわんがずっと元気なのは救いだった。いや、未払いで勤務先失った従業員はあまりにも救われなさすぎるんだけど。保障とか……ないんだろうな…つら…
2024年8月30日